税金相談室
1999年8月20日 13:00:00
アメリカ非居住者の銀行預金
アメリカ非居住者の銀行預金
【Q】:アメリカの銀行預金の利率は、1999年現在、日本と比べてはるかに高いため、日本に住んでいる父親がアメリカの銀行に自分名義の口座を開設して、より高額の利息収入を得たいと考えています。日本に住んでいる人が直接保有する、米国銀行預金の利子に対する税金について教えてください。
【A】:通常、アメリカ居住者が保有する銀行預金口座からの受取利子は、アメリカの所得税の対象となり、申告義務があります。預金者が非居住外国人の場合は、銀行預金から生じる利子は、アメリカの税法上、非課税となっています。日本在住者(米国の非居住外国人)が直接アメリカ国内に開設した銀行預金口座の利子は、アメリカでは免税ということです。
非居住者預金の扱いを受けるには、口座開設の際、非居住者である旨を明らかにするための様式「フォームW―8」に必要事項を記入のうえ、署名をして銀行へ提出する必要があります。Eビザ、Hビザ、Lビザなどの非移民ビザで滞在していた居住外国人が、アメリカに預金口座を残したまま帰国などのためアメリカを離れる際にも、「フォームW―8」様式を銀行へ提出し、居住者から非居住者への身分変更の届け出をしなければなりません。
これにより、それまで発行されていた課税対象の利子金額を記載した調書「フォーム1099INT」の発行が停止され、利子所得の申告義務がなくなります。IRS(内国歳入庁)は、コンピュータを使って調書上の金額が正しく税務申告されているかどうかを名寄せ照合しているため、「フォームW―8」様式による非居住者への身分変更の手続きを怠ったまま非居住者になったつもりで申告しないでいると、預金口座を閉鎖しないかぎり、毎年銀行から「フォーム1099INT」様式が発行されて、後日IRSから申告命令の督促状が送られてきます。居住者から非居住者になる納税者がアメリカに銀行口座を残しておく場合には、「フォームW―8」様式を銀行へ提出して身分変更届を行っておくことが大切です。
日本の税法上、日本在住で米国の銀行に預金している者は、居住者として全世界での所得が課税対象となります。日本国内の預金利子は、20%の税金(所得税15%、住民税5%の分離課税)が源泉徴収されて、申告義務がありません。外国からの利子所得は、日本で申告所得税の対象となり、一定額以上の他の所得がある納税者には、利子所得に対して20%の源泉徴収税率よりも高い税率が適用されることになります。
アメリカ国内に銀行預金口座を所有していた非居住外国人が死亡した場合、預金は連邦遺産税の対象外となります。その財産の相続人がアメリカ居住者であれば、日本の相続税も課されません。相続人が日本の居住者であれば、日本で相続税が発生します。生前贈与の場合にも、贈与者がアメリカの非居住外国人、受贈者がアメリカ居住外国人であれば、日米両国の贈与税の対象となることなく、贈与する方法もあります。
(KPMG特別顧問 米国公認会計士 大島襄)