会計相談室
2013年8月14日 13:00:00
ダブルチェックは社員の幸せのため
「譲矢(ゆずりや)さん、いやーまいった。先日、当社で使い込みが発覚しましてな。お恥ずかしい話です。」
「鬣(たてがみ)さん、いったい、何があったのですか?」
「実は、わしがふと気がつくと、聞いたような名前だが、よく見ると知らない仕入先ができていて、毎月支払いがなされていたのじゃ。てっきりわしは、同じ会社だと思っていたが、相手先から支払いがないと言ってきて、事件が発覚した次第だ。経緯をたどってみると、何とわしが一番信頼していた経理主任が、架空の支払先を作って支払いをしていたのだ。」
「鬣さん、何故、その経理主任は電信送金をできたんですか?」
「通常は、わしがチェックにサインをするのだが、そこの支払いは、電信自動振替をセットされていて、見落としていたのだよ。ただ、何故、あのようなまじめでおとなしい男がそのようなことをしでかしたのか、不思議でならない。」
「その経理主任は、経理のインプットもしていたのですか?」「インプットはやつの部下がすることになっていたが、やつもインプットをできる立場にはいた。」
「鬣さん、経理の基本ですが、お金を扱う人とインプットを行う人は絶対に違う人にしなければいけません。」
「これは、従業員を疑うという意味ではなく、大切な従業員を守るためのシステムです。会社は様々な人で構成されています。それゆえ、1人ではできない大きなことを成しえることが可能になります。しかし、反面、個々人は弱い面も同時に持ち合わせていることを常に肝に銘じておかなければなりません。その弱さから守って上げ、罪を犯させないようにするシステムが会社には必要なのです。そのために基礎の基礎であるお金を扱う人とインプットを行う人は絶対に違う人にするというダブルチェックの原則を守る必要があります。鬣さんは、それができなかったために今回、最も信頼していた優秀な経理マンを失ったのかもしれません。」
「そうか、そうだったのか、わしは何としたことをしでかしてしまったのじゃ、今後は十分に気をつけることにしよう。」
<解説>譲謙がいっているダブルチェックの原則は会計の世界では内部統制ともよばれています。
これは、同じ業務を複数の人で分業することを基礎とします。
ただ、内部統制は、人に間違いをおこさせないための心のシステムというよりは、不正を起こりにくくする、または、発見しやすくする機械的なシステムをいいます。
内部統制では、インプットをする者と財産保有者および承認者の3者を分けることになります。
米国公認会計士齊藤事務所 (www.saitollp.com, info@saitollp.com):齊藤幸喜