会計相談室
2022年10月7日 14:00:00
リース会計の利率はどうやって決める?
「譲謙(ゆずけん)さんや、うちも今月から新しい会計基準(ASC842)を導入して、リース資産とリース負債を貸借対照表に計上することにしたんじゃが、わからないことがあってな。質問してもいいか?」会社経営者の鬣(たてがみ)がおもむろに会計コンサルタントの譲矢謙吉(ゆずりやけんきち、通称譲謙(ゆずけん))に聞いた。「ASC842は今年から全ての会社のオペレーティングリースの資産計上が求められますから、よい取り組みだと思います。質問はなんですか?」「リース負債を計上するための利率をどうやって計算するかじゃ。」「それは、難しい問題ですね。」「そうじゃろ、貸している方は、利率をわかっているはずじゃが、借りている方にはいくらの利率で貸し出しているかなど全くわからん。」「その通りです。そこで、ASC842では3つの利率のうちどれかを使うように言っています。」「ほう、それは何じゃ」「Implicit rateとIncremental borrowing rateとRisk-free rateです。ただし、この順番にそって、適用可能性を検討しなければなりません。ちなみにRisk free-rateは上場会社では使用できません。」「そもそも3つのレートの違いは何なのだ?」「まず、Implicit rateですが、リース契約で用いられているレートです。」「そんなもの、さっき言ったようにわかるはずがないじゃろ。」「場合によっては、容易に割り出せるものもあります。たとえば、自動車やコピーマシン、ピアノなどは市場価格が比較的入手しやすいので、支払ったリース料から比較的簡単にImplicit rateを割り出すことができます。このように比較的簡単に推定できる場合には、そのレートを用いなければなりません。」「ふむふむ、確かにそうだな。」「それじゃ、わからなかった場合の2番目の方法はどんなんじゃ?」「Incremental borrowing rateといいますが、これは会社が銀行などの金融機関からお金を借りたとしたら、借入金利は何パーセントかを用いて計算する方法です。このレートは会社の信用力や担保力によって差が出てきます。」「そうか、じゃ実際にうちの会社は借入金があるから、それを参考にしてもよいのじゃな。」「そうです。最後にRisk-free rateですが、これは投資家がリスクなしでマーケットで稼げる利率です。例えば、政府の国債の利率などが典型例です。」「ほう、それは簡単に入手できるのう。」「そうです。したがって、Implicit rateとIncremental borrowing rateのどちらも容易に入手ができず、入手しようとするとコストがかかりすぎる場合で、かつ、非上場会社である場合にしか認められていません。さらに、このrateを適用する旨の会計規定を社内できちんと定めておく必要があります。」「安易にRisk-free rateを用いてはいけないということじゃな。わかった、ありがとう、大変ためになった。」
米国公認会計士齊藤事務所 (www.saitollp.com, info@saitollp.com):齊藤幸喜