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税金相談室

2007年3月10日 23:00:00

二州にまたがる州税

Inage Hawaii

質問:州税についての質問です。住んでいる州と働いている州が異なる場合の州税の申告方法について教えてください。また、夫婦が異なる州で勤務してそれぞれ収入があり、居住州も異なる場合の州税の申告方法についても教えてください。


答え:連邦所得税は、どの州に住んでいたか、あるいは、どの州で収入があったかということに関係なく、年間のすべての所得が課税対象となります。州税は、50州のどの州にも所得税制があるわけではなく、アラスカ、フロリダ、ネバダ、サウスダコタ、テキサス、ワシントン、ワイオミングの7州には所得税制がありません。ニューハンプシャー、テネシーの2州では、利子、配当、不動産や株式のキャピタル・ゲインなどの投資所得だけが課税対象となります。その他のすべての州、41州とワシントンDCには連邦所得税に類似した税制、すなわち、給与その他の役務所得、利子、配当、不動産所得や譲渡所得など年間のあらゆる所得が課税対象となり、各種控除が認められて課税所得と税額を算出するという方法による税制があります。税率は州によって異なります。


●州を越えて勤務している場合

居住している州と勤務している州が異なる場合、連邦税は、通常、「独身」または「夫婦合算申告」(ジョイント・リターン)を適用して申告します。州税については居住州と勤務州の二つの州で、連邦税と同様、「独身」または「夫婦合算申告」を適用して所得税申告を行うことは分かりますが、それぞれの州において居住者・非居住者のどちらの身分で申告すべきなのかということが問題になります。まず、勤務州には、非居住者の身分でその州源泉の収入(給与所得)を課税対象所得として報告し計算した所得税を申告納税します。一方、居住州には、居住者の身分で連邦税上報告した所得と同じ年間全所得を報告します。その際、勤務州で申告納税した税金について「他州税額控除」の形で控除を受けます。


「他州税額控除」は、勤務州で既に課された税金によって居住州の税金が相殺されて、二重課税の回避を達成するために設けられた州税計算上の仕組みです。この仕組みは連邦税の「外国税額控除」と類似した理論に基づいています。連邦税法上、居住者の身分で全世界所得を報告して申告納税する際、既に一度外国(非居住国)で課税された所得が含まれていると、外国税額控除の作用により二重課税の回避が認められます。州所得税における他州税額控除は、連邦税の外国税額控除の取り扱いと全く同じであると言えます。


州の実効税率の違いにより、勤務州の税金が全額他州税額控除として居住州の税金と相殺される場合とされない場合とがあります。勤務州(他州)で課税を受けなかった州外源泉所得、例えば利子所得、配当所得、日割計算で非課税扱いとなった給与などに税金が計算されて居住州で支払を必要とすることになります。


[例1] AさんはNJ州に居住し、NY州の会社に勤務して給与を受け取っています。給与からは連邦税、NY州税が源泉徴収されており、年明けに連邦、NY州、NJ州の個人所得税申告書を提出しています。Aさんの収入は、①給与以外の所得はない場合、②給与の他に銀行預金利子、配当などの投資所得がある場合、を考えてみます。

① NY州税は確定申告額よりも源泉徴収された金額の方が多いため還付になりました。NJ州税は、給与分の税金が「他州税額控除」の作用により相殺されて、申告納税の支払は必要としませんでした。

② NY州税は①と同じく還付になりました。NJ州税は、給与分の税金は「他州税額控除」で相殺されて支払いの必要はなかったのですが、投資所得分の税金の支払が必要となりました。


● 夫婦が州を越えて居住している場合

配偶者の就職先が元来住んでいた州と離れた州にある場合、夫婦が別々の州に居住し勤務することを余儀なくされます。夫婦が二つの異なる州に居住し勤務している場合、連邦税および州税はどのように申告するのか検討します。


連邦税は「夫婦合算申告」(ジョイント・リターン)または「夫婦個別申告」(セパレート・リターン)のいずれかの税率を適用して申告しますが、殆どの場合有利となるのが「夫婦合算申告」です。州税については、夫と妻のそれぞれが居住州において居住者の身分で申告します。税率は、連邦税の計算上は「夫婦合算申告」を適用したとしても、州税上は「夫婦個別申告」を適用します。それは、そうすることにより本人分の所得だけを報告して州税の計算ができるからです。もしも「夫婦合算申告」を適用すると、他方の配偶者の他州源泉所得も含めて報告して他州税額控除の計算もしなくてはならず、いたって煩雑であるばかりでなく、税金がより多額に計算されて不利となります。


[例2] 夫Bさんはマサチューセッツ州に住んでいて同州の大学に勤務して給与を受け取っています。妻Cさんはイリノイ州に住んでいて同州のオーケストラでバイオリニスト団員として給与を受け取っています。預金利子、配当などの投資所得はそれぞれの居住州からだけであり、非居住州からの収入は全くありません。連邦税は「夫婦合算申告」を適用して申告書を提出します。州税はマサチューセッツ州およびイリノイ州の二州で申告します。マサチューセッツ州では夫Bさんが居住者、妻が非居住者、そして「夫婦個別申告」で申告します。イリノイ州では妻Cさんが居住者、夫が非居住者、そして「夫婦個別申告」で申告します。「夫婦個別申告」を適用することによりそれぞれ本人分の所得だけを報告するため、節税になります。

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