税金相談室
2001年11月5日 23:00:00
住居の売却
住居の売却 Q:住居を売り、売却益が発生した場合の税金について教えてください。 A: (1)住居売却益の非課税措置 住居を処分して得た売却益は、アメリカの税法上、2年間の所有条件と居住条件を満たしていれば、一定金額まで非課税扱いとなります。一方、住居の売却損には、原則として控除が認められません。 売る前5年間のうち2年以上にわたって納税者が所有しており、しかも主たる住居として納税者が実際に住んでいた場合に限り、住居を人に売って得た売却益は、夫婦合算申告(ジョイント・リターン)で50万ドル、夫婦個別申告(セパレート・リターン)でそれぞれ25万ドル、または独身で25万ドルまでが非課税扱いとなります。 50万ドル(25万ドル)の非課税を超える売却益がある場合は、超過額が連邦および州・市の所得税の対象となります。連邦税には、20%の長期キャピタル・ゲインの優遇税率が適用されます。主たる住居以外の物件、たとえばセカンド・レジデンス、別荘、投資不動産などを売却した場合は、非課税措置の適用は受けられず、売却益の全額が課税対象となります。 50万ドル(25万ドル)の非課税は、2年間の所有条件と居住条件を満たした主たる住居の売却である限り、一生に何回でも利用できます。納税者のビザの種類や、アメリカに住んでいるかどうかも関係なく適用となります。例えば、グリーン・カード以外のビザでアメリカに滞在していた日本人が日本に帰国後、非居住外国人になってからアメリカの持ち家を売る場合、またはグリーンカード保持者がアメリカ国外在住中に住居を売る場合、あるいは日本からアメリカへの転勤者が、渡米後に日本の家を売る場合などが挙げられます。これらの場合でも、2年間の所有条件および居住条件さえ満たしていれば、50万ドル(25万ドル)の非課税措置の適用を受けることが可能です。 (2)非居住外国人の不動産譲渡に対する10%源泉徴収税 日本に帰国後、アメリカ税法上の非居住外国人になってからアメリカの住居を売却する場合に、避けられない税金の問題が一つあります。それは、非居住外国人が米国内に保有している不動産を売却する際に課せられる、売上価格の10%の源泉徴収税です。不動産の買い手(通常は買い手の弁護士)は、売り手が非居住外国人であるかどうか確認する義務があります。売り手が非居住外国人である場合は、不動産の代金を引き渡す際、買い手(または買い手の弁護士)は、売上価格の10%をIRS(内国歳入庁)に納付し、残りの90%を売り手に支払います。 ただし、不動産の売上価格が30万ドル以下であり、しかも買い手側が日常的に住む家として購入する場合は、10%の源泉徴収税の対象となりません。売上価格が30万ドル超の場合も、その不動産の取得時の金額(取得費)よりも少ないため譲渡損失が発生することや、売却益が少ないため税額が10%の源泉徴収税額よりも低いことが分かっている場合は、IRSへ申請をして源泉徴収税の減額または免除の特別許可を取得できるという規定があります。しかし、この特別許可の発行を受けるには、相当に煩雑な手続きが必要です。せっかく申請しても、売却契約締結日(クロージング)から90日以内にIRSの特別許可が発行されないケースが多く、この場合には10%の源泉徴収税を納付しなければならないため、この規定の利用価値はいたって低いのが現状です。 (3)非居住外国人の還付請求 非居住外国人は、不動産を売却した翌年の4月15日までに確定申告書フォーム1040NRをIRSへ提出し、不動産譲渡損益の計算スケジュールDを添付します。確定申告書の提出は10%の源泉徴収税を差し引かれたかどうかに関係なく必要とします。 不動産譲渡損益とは、売上価格から、取得費、改築費、売るためにかかった費用(譲渡費用)を差し引いた金額です。 この金額が黒字になり、上記の非課税措置の適用を受けられない場合、連邦税は長期キャピタル・ゲイン税率である最高20%で課税されます。すでに源泉徴収で売上価格の10%を納付した場合は、それと合わせて精算し、還付または追加納税となります。州税は、かかる州とかからない州があります。損益の計算結果が赤字になった場合は、源泉徴収税の全額が還付されます。源泉徴収税の精算には、フォーム8288ーAをフォーム1040NRに添付して提出しなければなりません。 KPMG特別顧問 米国公認会計士 大島襄