会計相談室
2024年12月13日 14:00:00
外国税額控除 日本との比較 2
「譲謙(ゆずけん)さん、日本の友人に外国税額控除の日米の違いを聞かれたんじゃが、全く分からなかったんじゃ、しろうとでもわかるようにかみ砕いて教えてくれんかのう?」会社経営者の鬣(たてがみ)はおもむろに会計コンサルタントの譲矢謙吉(ゆずりやけんきち、通称、譲謙)に尋ねた。
「もちろんです。」
「まずは外国税額控除とは何か教えてくれんか?」
「はい、納税者が日本かアメリカ(居住国)に住んでいて、稼いでいるのが居住国のみではなく、海外でも稼いでいたとします。その場合には、居住国(本国)では全世界所得で申告をして納税をすることになります。しかしながら、海外で稼いでいる所得に関しても、その国で申告納税をしなければならないことがままあります。そうすると納税者は、海外で稼いだ所得に関して居住国で税金を払い、海外でも税金を支払うことになり、二重課税が生じてしまうことになってしまいます。その二重課税を排除しようとする税制度が外国税額控除です。」
「そうか、そうすると同じ所得で二重に税金を支払うことはなくなるわけだな?」
「はい、その通りです。」
「どうやって、それは計算するんじゃ?」
「本国での税金に関して全世界所得と国外所得の比率で国外所得に対する税金を割り出します。」
「その計算方法は日米で違うのか?」
「ここまでの計算方法は日米で同じです。」
「それじゃ、違いはないということか?」
「いえいえ、全く同じではありません。日本の計算では、国外所得に90%までという制限があります。アメリカにはありません。その分、日本の方が税金を多く支払うことになります。」
「それは日本の方が損だな。ところで、アメリカには州税があるが、そこにも外国税額控は使えるのか?」
「いいえ、アメリカの州税には外国で支払った税金を控除する制度はありません。ここは二重課税になってしまいます。」
「それじゃ日本はどうだ?国税の他に地方税があるじゃろ。」
「はい、日本では法人税や地方法人税という国税の他、道府県民税や市町村民税という地方税があります。外国税額控除は国税の他、地方税からも控除できます。」
「そこはアメリカよりも得だな。」
「その通りです。控除の方法は、控除対象の税金をまず法人税から控除し、控除しきれない金額を地方法人税、→道府県民税→市町村民税の順序で控除していきます。」
「そうか、順番に控除していくんじゃな。」
「その通りです。」
「外国税額控除が控除しきれなかった場合には、繰越ができるのか?」
「はいできます。アメリカは10年で、日本は3年です。」
「長さにも結構差があるのぉ。ところでいつの期間で控除できるのじゃ?」
「日本は納付確定日か申告書の提出日です。アメリカもほぼ同じです。」
「源泉徴収された利子や配当はどうなんじゃ?」
「日本もアメリカも支払日が基準になります。」
「外国税額控除は、それを選ばないで損金として計上することもできるのか?」
「はいできます。しかしながら、一般的には外国税額控除を選択する方が有利となっています。」
「よーくわかった。ありがとう。」
米国公認会計士齊藤事務所(Saito LLP):齊藤幸喜 (www.saitollp.com, info@saitollp.com)