会計相談室
2008年11月5日 14:00:00
新連結会計基準
Q. 来年度より新連結会計基準が適用になると聞きましたがどのような内容でしょうか?
A. 米国会計基準審議会(FASB)は2007年12月に連結会計について基準141(R)号を公表しました。これは2001年に公表された141号の改定バージョンです。2008年12月15日以降に始まる会計年度の財務諸表から適用になります。
141(R)号は141号で不明確だった会計処理をより明確にした点が特徴です。ただ、時価会計や偶発債務をより明確に取り入れたため、その分野の適用方法がより複雑になっています。141号の内容に入る前にまず、アメリカの連結会計の歴史からお話します。アメリカの連結会計は、当初APB Opinion 16号によって規定されていました。
当時、現在の日本の会計処理のように買収法(purchase method現在のacquisition method)と持分プーリング法(pooling-of-interests method)が認められていました。しかし、その後の研究により買収と合併はもともと経済的に非常に似た取引で本質的に異なる点ほとんどなく、それら類似する取引につき2つの全く異なる会計処理方法を認めた場合、国境を越える買収合併が頻繁に行われる現在では、財務諸表の利用者や世界経済に大きな弊害をもたらすと考えられるようになりました。
連結会計の処理方法としては①プーリング法②買収法③フレッシュスタート法(fresh-start method)が検討されました。①プーリング法では買収価格と簿価の差額についてはのれんが発生せず全て資本勘定で処理されますが、場合によってはほとんど資本がなくなり実態を反映できません。②買収法では、買収先を完全に時価で換算できれば、買収した相手先の資産負債や純資産を正確に貸借対象表(balance sheet)に反映させることができます。③フレッシュスタート法は、連結会社を新会社とみなして両者の会社の元々の資産負債を全て時価換算する方法です。
2001年に公表された141号では、買収法のみが連結会計では認められることになりました。買収法の採用によって問題となった点が、のれん(goodwill)の処理方法、無形固定資産の測定方法、負ののれん(bargain purchase)の処理方法、少数持分株主(Non-controlling interest)や偶発資産債務(other contingency)、条件付買収費用債務(contingent consideration)です。のれんは、2001年の会計基準141号から償却が禁止され、替わって毎年、公正価値による減損テストが実施されることになりました。
無形固定資産については同時に公表された142号によって、マーケティング無形資産、カスタマー無形資産、芸術無形資産、契約無形資産、テクノロジー無形資産等に分類されより詳細に分類及、測定され、会計処理についても細かく規定されることになりました。
141(R)号の適用範囲は買収合併した場合とするのではなく、ある企業が他の企業のコントロールを取得する場合としています。これは相互会社(mutual entity例;相互保険会社)にも適用されます。141(R)号の適用除外となるのは、ジョイントベンチャー、ビジネスを伴わない単なる資産の買収、同一企業グループ内での買収合併、プッシュダウン会計(スピンオフも含む)、非営利法人の買収合併です。
買収者(acquirer)の定義は買収や合併で他の企業のコントロールを得た者ですが、①対価を支払う企業②株を発行する企業(ただしリバース買収は除く、リバース買収とは、非公開会社が公開会社になりたいが自社の株を公開したくない場合に行なわれる買収手法で公開会社を非公開会社が法形式上買収することによって行われます。この場合、法律上は公開会社が株を非公開会社に株を発行するため公開会社が買収者にみえますが、実質的には非公開会社が買収者であるため、会計上は非公開会社を買収者として取り扱います。)③相手側より資産、収益や利益が著しく大きな企業④合併買収を主導している企業⑤合併の結果新しく設立された企業などが考えられます。ちなみに買収日とはコントロールが移転した日をいいます。
米国公認会計士
大島斉藤会計事務所
齊藤幸喜