税金相談室
2000年6月5日 13:00:00
美術品の売却と慈善寄付
美術品の売却と慈善寄付
Q:美術品を売った場合の税金について教えてください。また、美術品を慈善団体へ寄付した場合の控除はどのようになるのでしょうか。
【美術品の売却】
1年以上保有した株式や証券を売却して得た譲渡益は、長期キャピタルゲイン税の優遇措置が適用され、税率は最高20%となります。絵画、彫刻などの美術品を売却して得た譲渡益は、優遇税率ではありますが、28%です。ただし、画家や彫刻家自身が自分の作品を売却した場合は、通常の所得税の対象となり、15~39・6%の間で5段階の税率となります。
美術品のほか、武具、古楽器、古銭、切手などの骨董品、宝石、貴金属を含む収集品の売却益に対しても、28%の優遇税率が適用されます。
美術品などの売却益は、売却価額から取得費を差し引いた金額です。相続によって取得した美術品の場合は、アメリカの税法では、相続発生時の時価(マーケット・バリュー)を取得費とします。相続してから売却するまでの保有期間が1年以下であったとしても、1年以上保有したと見なされて、税率28%が適用されます。
【美術品の慈善寄付】
アメリカの税制では、物品を慈善寄付すると、所得税申告の際に相当金額を控除することができます。
美術品を慈善団体に寄付しても控除が認められますが、その控除金額は、寄贈者が作品制作者かどうか、また保有期間が1年を超えているかどうかによって異なります。
アーティストが自分の作品を慈善寄付した場合は、保有期間の長短に関係なく、制作コストが控除金額となります。制作者本人以外の納税者が1年以上保有した美術品を寄付すると、その美術品の時価が控除金額になります。保有期間が1年以下の場合は、美術品の取得費が控除金額です。
美術品の慈善寄付控除に適用される税率は、通常の所得税率です。28%よりも高い所得税率で課税されている高額所得者は、美術品の売却後その資金を寄付するよりも、現物を直接寄付するほうが節税になります。
KPMG特別顧問、米国公認会計士 大島襄