会計相談室
2021年12月20日 15:00:00
自宅売却によって発生した売却益の所得控除
「アメリカでは、自宅を売却して儲かっても税金がかからないと聞いたが、本当か?」会社経営者の鬣(たてがみ)は会計コンサルタントの譲矢謙吉(ゆずりやけんきち)におもむろに尋ねた。「はい、アメリカの自宅売却による譲渡益には大きな節税措置がなされています。」「今、うちの近所はずいぶん値が上がって、自宅の売却を考えているんじゃ。どんな税制か教えてくれんか?」「基本的に過去5年間のうちに2年間以上住んでいれば、1人につき25万ドルまで控除をとれるので、夫婦なら最高で50万ドルまで所得控除がとれます。」「なに、それじゃ、50万ドルまでは何も申告しなくていいということか?」「そうです。全く申告する必要がありません。この所得控除を受けるためには2つの条件を両方とも満たさなければなりません。」「何じゃ、それは?」「オーナーシップテストと居住テストです。どちらもメインの自宅の売却までの5年間の間に2年間満たす必要があります。ただし、過去に自宅売却でこの譲渡益控除を受けていた場合には、2年以上経たなければ自宅売却の譲渡益控除を再び受けることはできません。逆に2年間あければ、再びこの控除を受けることは可能です。」「どんな場合でもこの条件を満たせばキャピタルゲインを全く申告しなくてよいのか?」「いえ、もしも、Form 1099-Sを受けとった場合や25万ドルまたは50万ドルを超えるゲインが発生した場合には、Schedule DやForm 8949で申告が必要です。また、同種交換(like-kind exchange)や出国税(expatriate tax)では使用不可です。」「オーナーシップテストじゃが、家の名義はわし1人になっているぞ、それじゃ25万ドルまでか?」「もしも、鬣さんが個人税申告書を夫婦合算申告する場合には、どちらか片方がオーナーシップを持っていれば大丈夫です。」「そうか、それじゃ、わしは大丈夫じゃ。しかし、わしの友人は奥さんがアメリカに住んでいて家の所有権を持っているが、旦那が日本にいてVISAも所有権をもっておらん。だから夫婦個別申告を選んでおるので、この場合は25万ドルじゃな?」「その通りです。学生ビザの夫婦も税務上は非居住者扱いで夫婦合算申告ができないので、50万ドルの控除はとれません。」「居住テストは何だ?」「これは夫婦両者ともに5年間のうち2年間(730日)をその家で住んでなければならないということです。」これは大丈夫じゃ。しかし、これらのテストを満たさないと控除は$0なのか?」「いいえ、もしも転職等でこの条件を満たせなくなった時には満たした日数分の割合で控除ができます。また、貸家に使用した期間があるとどの期間で貸していたかで計算方法が異なります。」「控除できる金額はどうやって計算するのじゃ?」「それは、(売却金額―自宅の購入金額―自宅の増改築費用―売却にかかった諸費用)で計算します。」「そうか、よくわかった。ありがとう。」
米国公認会計士齊藤事務所 (www.saitollp.com, info@saikos.com):齊藤幸喜