会計相談室
2022年11月11日 14:00:00
通勤費の取り扱い
Q: アメリカの通勤費の取り扱いについて教えてください。現地従業員に対しては希望者に対して給与天引きをしており、それから通勤小切手(TransitCheck)を渡しております。駐在員に対しては、給与がネット支給方式であることと、一般的な旅費と同じく交通機関を使うということで旅費交通費と同じ扱いで精算処理をしています。何か問題がありますか?
A:アメリカでは、電車やバスなどの公共交通機関の利用による通勤費に対して一定額まで非課税対象とできる優遇措置があります。2022年度は月に$280までです。会社は、この規定に従って公共機関を用いて通勤をしている従業員に対して、給与の非課税扱いをすることができます。
その場合には、従業員が会社に通勤費用を天引きしてもらって、その部分の給与を会社から、メトロカードなどの現物支給を行うか通勤小切手か通勤デビットカード(Transitcheck Card)として支給することができます。通勤費天引き部分を現物で支給するか通勤小切手か通勤デビットカードで従業員へ支給する理由は、通勤費以外への流用を防ぐためです。
一方、会社が従業員に対して通勤費部分を従業員に対して支給した場合には、給与に加算しなくてはなりません。アメリカでは通勤費支給(Commuting Allowance)した支払いを給与から直接控除することはできないのです。これは給与天引きが非課税にあることとは全く関係のないことです。
したがって、会社が通勤費を実費精算した場合には、たとえ駐在員であろうと精算金額を給与として加算することが必要です。ちなみに通勤費支給は、一定の福利厚生費を給与に計上しなくてもよいカフェテリアプラン(SEC125)の対象にはなりません。
よく勘違いを起こしやすい点が、通勤費を先のカフェテリアプランの対象と勘違いしたり、会社が旅費の精算と同じように考えてしまって旅費精算してしまうことです。また、税法上も給与に加算して通勤小切手分を給与天引きすれば、差し引き何の問題もないのではないかと考えてしまうことなども考えられます。
源泉所得税に対しては、確かにその通り影響はありませんが、失業保険税や疾病保険に関しては通勤費は非課税扱いはされないために過少申告が生じてしまうことになります。過少申告はかなり重大な法令違反になります。また、会社ではその金額も把握もしていないことになります。
通勤費の精算と旅費交通費の精算は似ていても非なるものであり取り扱いが異なるので注意が必要です。
米国公認会計士齊藤事務所 (www.saitollp.com, info@saitollp.com):齊藤幸喜