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税金相談室

2002年7月20日 22:00:00

S法人(株主課税法人)の課税

Inage Hawaii

S法人(株主課税法人)に資本投資をして事業経営に参加することになりました。S法人の税金の仕組みを教えてください。 ●S法人の利点 アメリカの株式会社は、各州の会社法の規定に基づいて設立されます。株式会社が、税法(内国歳入法)の第S章の一定要件を満たすとS法人(株主課税法人)と呼ばれます。 S法人以外の株式会社は、内国歳入法の第C章に基づく法人であるためC法人(一般法人)と呼ばれます。S法人は、C法人(一般法人)と会社法上の区別はありません。課税上の取り扱いだけ明確な相違点があります。 C法人は、法人が稼得した所得に対して、まず法人の段階で法人(所得)税が課せられます(連邦税申告書フォーム1120様式)。税引後の法人所得は、各株主へ配当として分配されますが、個人株主の段階でも利益配当について個人所得税が課せられます。すなわち、法人によって稼得された所得には、法人の段階と個人株主の段階とで、二重に課税が行われることになります。 S法人の選択をした株式会社は、原則として法人(所得)税の課税関係は発生しません。パートナーシップの場合と同様に、法人段階の所得、利益、損失および控除項目は、年度ごとに持ち株数に応じて、各株主に割り当てられ、株主の段階で課税を受けることになります(連邦税申告書フォーム1120S様式およびスケジュールK―1)。つまり、税法上のS法人は、法人(所得)税の負担がない点、C法人よりも有利な取り扱いを受けることができます。 S法人制度は、事業活動を法人形態で行う場合と、パートナーシップ形態または個人事業形態で行う場合の、単なる法的な組織形態の選択によって生ずる税負担の相違を緩和する目的のために用意された仕組みです。会社法上は法人格を有する株式会社であっても、経済的な実態はパートナーシップ(または個人事業)と同程度の規模で事業が行われているのであれば、所得課税も同様になされるべきです。つまりS法人制度は、税制が経済に歪みを生じさせ、投資および企業経営の意思決定に影響を与えることがないようにするため、そして租税の中立性を保つために設けられた制度です。 S法人の多くは、株主1人ないし数人の小規模会社であり、会社法上および一般的な外見上は普通の株式会社と何ら変わりがなく、所有と経営の分離、株主有限責任、対外的に比較的高い信用を得ることができるなど、普通の株式会社の場合に近い利益にあずかることが可能です。S法人はここでは、「株主課税法人」と訳されていますが、「小規模法人」と訳される場合もあります。 ●S法人の要件 50州のいずれかの州の会社法の規定に基づいて設立された内国法人(Domestic Corporation)は、次の4条件のすべてを同時に満たすことにより、S法人の選択を行うことができます(IRC第1361(1)(2)条)。 (1)株主数は75人以内であること (2)株主は個人、遺産財団、特定信託であること。 (3)株主は非居住外国人、法人、パートナーシップでないこと。 (4)発行株式は1種類だけであること。 なお、金融機関、保険会社、プエルトリコ法人、内国国際販売法人(DISC)は非適格法人となります。 ●S法人の選択 S法人としての取り扱いを希望する法人は、フォーム2553様式を規定された提出期限までにIRSへ提出することによりその選択ができます。 S法人選択には株主全員の同意が必要です。選択の時期は、S法人としての取り扱いを希望する前課税年度、または当該課税年度開始後第3カ月目の15日までにフォーム2553様式を提出します。たとえ当該年度が既に開始されていたとしても、第3カ月目の15日までに選択をすれば、期首(期間のはじめ)に遡ってS法人に転換することができます。 第3カ月目の15日以降にフォーム2553様式の提出がなされた場合は、翌年度の期首からS法人となります。新設法人は、最初の課税年度開始から第3カ月目の15日まではS法人選択をすることで、一般法人の期間を経ることなく、最初からS法人となることができます。なお、いったんS法人選択が行われると、終了するまで継続して有効となります。 米国公認会計士 大島 襄会計士事務所所長 大島襄

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